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遺言は、遺言者が亡くなった後に効力が発生するものですから、遺言の内容に不明確な部分や疑問点があった場合に、遺言者に遺言の真意を尋ねることはできません。そのために遺言を遺された方々の間で、無用な争いを招いてしまうことも考えられます。

そこで、遺言を遺された方々の間で争いとならないように、法律上、遺言でできることが制限されています。つまり、法律で定められた事項以外のことを遺言に書いても法的な効力は発生しない、ということです。せっかく書いた遺言に効力が認められないということがないように注意が必要です。

今回の記事では、遺言でできることについて、ご説明します。

相続・財産の処分に関する事項

遺贈

遺言によって財産を特定の人に譲ることができます(民法964条)。

遺贈の例としては、次のような方法があります。

特定遺贈
遺贈の目的を特定して遺贈する方法
全部包括遺贈
相続財産の全部を遺贈する方法
割合的包括遺贈
Aに相続財産の3分の2、Bに3分の2などと割合をもって遺贈する方法

特定遺贈をする場合には、財産を明確に特定するように注意しましょう。不動産の場合には登記簿謄本(不動産全部事項証明書)の記載に従って特定し、預金などは銀行名、取扱支店名、預金の種類、口座番号、名義等で特定します。

遺産分割方法の指定

遺言によって遺産分割の方法を定めることができます(民法908条)。

遺産分割方法の指定の例としては、次のような方法があります。

現物分割
土地をA、建物をBに取得させるなど、財産そのものを分割する方法
換価分割
遺産を売却して金銭に換価し、相続人で分ける方法
代償分割
遺産の現物はAに取得させるかわりにAに他の共同相続人に対して金銭を支払わせるなどの方法

なお、遺産分割方法の指定を第三者に委託することも可能です。

遺産分割の禁止

5年以内であれば、遺産分割を禁止することができます(民法908条)。

相続分の指定

もともと相続人には法律によって相続分が定められているのですが、遺言で、法定相続分と異なる相続分を指定することもできます(民法902条)。また、相続分の指定を第三者に委託することも可能です。
法律によって定められている「法定相続分」については、こちらの記事をご参照ください。
遺産の取り分 – 法定相続分と特別受益・寄与分

推定相続人の廃除、廃除の取消

遺言者は、推定相続人を廃除する遺言をすることが認められています(民法892条)。
推定相続人が、被相続人に対して虐待、重大な侮辱、その他著しい非行をしたときに、相続人の廃除が認められており、廃除が認められるかどうかは、家庭裁判所が判断します。遺言執行者が、家庭裁判所に推定相続人の廃除を請求することになります。

祭祀主宰者の指定

墓などの祭祀財産の所有権は、祭祀を主宰すべき者が承継するものとされています。
祭祀を主宰すべき者は、被相続人が指定することができます(民法897条)。

特別受益者の持戻しの免除

被相続人から遺贈や生前贈与を受けた共同相続人がいる場合には、その遺贈や生前贈与の額を相続財産に加算して相続分を算定します。これを特別受益の持戻しといいます。
しかし、被相続人は、特別受益の持戻しを免除する旨の意思表示をすることができます(民法903条3項)。

担保責任の定め

民法上、共同相続人は他の共同相続人に対して、売主と同じように、担保責任を負う旨の規定がありますが(民法911条から913条まで)、被相続人が遺言で別段の意思を表示することによって、相続人の担保責任を変更することができます(民法914条)。

遺贈の減殺の割合

相続人に対する複数の遺贈が遺留分減殺請求の対象となるときには、目的物の価額の割合に応じて減殺されることが原則ですが、遺言者が別段の意思を表示した場合には、その意思に従います(民法1034条但書)。

遺言執行者の指定

遺言者は、遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定することができます(民法1006条)。
また遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます。

一般財団法人設立のための財産の拠出

遺言によって、一般財団法人を設立することができます(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律158条2項)。

信託の設定

遺言によって、信託を設定することができます(信託法3条2号)。

保険金受取人の変更

遺言によって生命保険金の受取人の変更をすることができることが、平成22年4月1日に施行された保険法で明文化されました(保険法44条)。
もっとも、保険法施行前に締結された保険契約には上記保険法の規定は適用されませんので、保険法施行前に締結した生命保険契約について、遺言によって保険金受取人の変更をしようとする場合には、保険会社に確認する必要があります。

遺言の撤回

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができます(民法1022条)。

身分に関する事項

認知

遺言によって子の認知をすることができます(民法781条2項)。
遺言執行者は、就職した日から10日以内に、遺言の謄本を添附して、戸籍法の規定に従い届出を行います。

未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定

未成年者に対して最後に親権を行う方は、遺言で未成年後見人を指定することができます(民法839条1項)。また未成年後見人を指定できる方は、遺言で未成年後見監督人を指定することができます(民法848条)。

以上が法律によって定められている遺言事項です。なお、法的な効力は別ですが、付言事項として、自分の葬儀の方法や家族への思いなどを遺言に書くことは自由に行うことができます。

関連する記事

遺言作成の注意点については、こちらの記事もご参照ください。
遺言書の作り方 – 遺言の方式

また、遺言書作成のご依頼および法律相談は、こちらもご参照いただければと思います。