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本判決の位置付け

遺言書に花押を書くことは、印章による押印と同視することはできないと最高裁判所は判断しました。

事案の概要

Aさんは、平成15年5月6日、遺言書を作成しました。Aは、「家督及び財産はXを家督相続人としてa家を継承させる。」という記載を含む全文、日付および氏名を自書し、その名前の下に、花押を書いていましたが、この遺言書には、印章による押印がありませんでした。
そこで、印章による押印をせず、花押を書いていたことから、花押を書くことが民法968条1項の押印の要件を満たすか否かが争われました。

判決文(抜粋)

花押を書くことは、印章による押印とは異なるから、民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。
民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書のほかに、押印をも要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完成させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、我が国において印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認めがたい。
以上によれば、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。

簡単な解説

(1) 争点

「花押」というのは、「古文書で、自分の発給した者であることを証明するために書く記号」(「大辞林」)です。

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付および氏名を自書し、押印しなければならないと決められています(遺言書の作り方 – 遺言の方式)。

遺言の作り方は厳格に定められていて、要件を満たさない場合には、遺言が無効となってしまいます。そこで、花押を書くことが、自筆証書遺言の要件である「押印」と認められるかが問題となったのです。
この問題に対して、最高裁は、上記のとおり、「押印の要件を満たさない」と判断しました。

(2) 関連条文

民法968条1項
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

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